『スマホ脳』 アンデシュ・ハンセン

平均で一日四時間、若者の二割は七時間も使うスマホ。だがスティーブ・ジョブズを筆頭に、IT業界のトップはわが子にデジタル・デバイスを与えないという。なぜか? 睡眠障害、うつ、記憶力や集中力、学力の低下、依存――最新研究が明らかにするのはスマホの便利さに溺れているうちにあなたの脳が確実に蝕まれていく現実だ。教育大国スウェーデンを震撼させ、社会現象となった世界的ベストセラーがついに日本上陸。

 

人間の脳はデジタル社会に適応していない

進化の観点から見れば、周囲をより深く知ることで生存の可能性が高まるため、人間は常に新しい情報を求める。そのため、スマホが運んでくる新しい情報に対して脳がドーパミンを放出し、手放せなくなる。

 

大学生500人の記憶力と集中力を調査すると、スマホを教室の外に置いた学生の方が、サイレントモードにしてポケットにしまっておいた学生よりもよい結果となった。つまり、サイレントモードに関わらずポケットに入っているだけで集中力が阻害される。

 

ある研究で、2つの大学生のグループに同じ講義を聴かせた。片方のグループはパソコンを持参し、もう片方は禁止されていた。パソコンを持参したグループは講義中に講義に関するウェブページを見ていて、そのついでにSNSもチェックしていた。講義の直後、パソコンを使ったグループは、もう一方のグループほど講義の内容を覚えていなかった。

 

ある研究で約30名に、知らない人と10分間自由に話してもらった。テーブルを挟んで座り、一部の人はスマホをテーブルに置き、それ以外の人は置かなかった。その後、被験者たちに会話がどれくらい楽しかったかを尋ねてみると、視界にスマホがあった人たちはあまり楽しくなかった上に、相手を信用しづらく共感しにくいとも感じていた。

 

スマホが傍にあるだけで集中や記憶が妨げられるのと同じく、寝室にあるだけで睡眠が妨げられる。小学校高学年の児童2000人に、ベッド脇のテーブルにスマホを置いて寝てもらったところ、スマホを脇に置かなかった児童よりも睡眠時間が21分短かった。また、保護者に子供の睡眠時間を調べてもらった調査では、スマホを寝室に置いている子供のほうがそうでない子に比べて1時間も睡眠時間が短かった。

 

人間は地球上での時間の99%、ストレスの大部分が「闘争か逃走か」という類の危険に結びついていた。運動を定期的に行なっていて身体のコンディションがよければ攻撃に出るにしても慌てて逃げるにしても、その場を切り抜けられる確率が上がるので、ストレスや不安を軽減させることができる。6カ月間に最低52時間身体を動かすことが重要だとされており、最大限にストレスレベルを下げ、集中量を高めたければ息が切れて汗がかく程度の運動を週に3回45分するとよい。

 

スマホを手放したほうがよいからといって、種の起源に調和した暮らし(例えば、石器時代と同じものを食べて健康になろう)のほうが人間にとってよいものである思うのは思考の罠であり、自然主義的誤謬と呼ばれる。

 

感想

元々ベストセラーであることを知っていて、偶然図書館で見つけたので読んだ。

 

人類の歴史を考えたときに、その95%では狩猟採集民として生きており、また99.99%においてスマホが存在しない世界であったので、人間は現代のデジタル社会に適応するようには進化していないということがわかった。かと言って、集中力を欠くといったスマホのデメリットを考慮すると人間がこれからスマホに適応するように進化していくとは考えにくいということも学ぶことができた。

 

本書を要約すると、スマホを使えば使うほど集中力が妨げられ、メンタルヘルスや睡眠に悪影響を及ぼし、自尊心を下げるので人生の質を下げることに繋がる、という内容である。そのために、定期的に運動をしたり、デジタルデトックススマホでなくてもいい機能はスマホを使わないようにする、時間制限を設けるなど)をすることが有効である。

 

色々な研究結果が記載されていたが、出典が書かれていないことが気になった。デジタルそのものの発展は、デジタルに関する研究よりも速いため、常に最新の研究結果を追う必要があると感じた。

 

面白さ   :★★★☆☆

役立ち度  :★★★★☆

専門性   :★★★☆☆

読みやすさ :★★★☆☆

読了所要時間:★★☆☆☆

総合評価  :★★★☆☆

 

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